性差医療について(2)では皮膚と女性ホルモンについて記載してみます。
皮膚と女性ホルモン
(1)月経で悪化する皮膚症状と皮膚慢性疾患
月経前には「月経前症候群」といわれる種々のつらい症状に苦しむ女性が多いことが知られています。これは月経の1〜2週間前から症状が出現して、月経とともに症状が消える症候群を指しています。症状は、頭痛、腰痛、下腹痛、関節痛、むくみ、下痢、めまい、尋常性ざ瘡(ニキビ)などの身体の症状と、うつ的な気分、無気力、不眠、情緒不安定、攻撃的になるなどの精神の症状などです。これらが単独あるいは複数同時に出現します。女性にとっては、日常生活をしてゆく中で、かなり大きなウエートを占めるものです。皮膚にも月経前症候群の一部として様々の症状が認められます。それらは皮膚の浮腫、易刺激性の亢進、乳房の腫脹や圧痛、顔面の小色素斑や肝斑の増強などです。また月経周期に同調して従来から罹患している疾患の悪化がしばしば認められます。それらの疾患にはニキビ、単純ヘルペス、脂漏性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、酒さ、尋常性乾癬、扁平苔癬(へんぺいたいせん)、全身性エリテマトーデスなどがあげられます。
(2)月経疹
月経に伴う中毒疹の一型で、月経の5〜10日前に皮疹が出現し、月経開始とともに消退します。蕁麻疹型、膿疱型、湿疹型、水疱型、紫斑型などが知られています。月経周期で変動するホルモンの関与、月経に伴い産生される物質に対する中毒性反応、白血球の中の好中球の遊走因子の関与などが病因としてあげられています。エストロゲンやプロゲステロンを皮膚に注射してテストする皮内反応は陰性です。
(3)自己免疫性プロゲステロン皮膚炎
プロゲステロンに対する自己免疫反応により出現すると考えられている皮膚炎です。患者さんの血清中に抗プロゲステロン抗体が検出され、プロゲステロンによる皮内反応が陽性です。生理不順、無月経などに対してプロゲステロン製剤を投与することにより、抗プロゲステロン自己抗体が産生され(プロゲステロンに対する過敏反応の獲得)、それが月経周期の排卵後から増加して月経直前に低下する自己分泌性(内因性)のプロゲステロンと反応して、蕁麻疹型、紅斑丘疹型、水疱膿疱型、多形紅斑型、混合型などの種々の発疹を生ずると言われています。妊娠中にはプロゲステロンが増えるため、発疹が増悪することがあります。
(4)エストロゲン皮膚炎
エストロゲンによる皮内反応が陽性で、エストロゲンに対する過敏反応と考えられています。蕁麻疹型、湿疹皮膚炎型の発疹が認められ、妊娠中に増悪することが知られています。
次回は毛と性ホルモンについて記載する予定です。