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症状、予防対策についての解説です。

１）ニキビとは

ニキビは学名ではざ瘡（そう）と言います。英語ではアクネと言います。毛包（毛穴のこと）とそれに付属している脂腺全体を炎症の場として生じます。好発部位は顔面、胸、背などで、一般的には思春期に発症します。思春期には脂腺の働きが活発になり、毛穴に皮脂や角質が貯留し、それらを元に炎症が惹起されやすくなるからです。ひと昔前までは、あまり気にされず、医療行為は重症型の患者さんにのみ施されることが多かったのですが、最近は思春期から青年期の人達の間で美容への関心が高まり、軽症でも医療機関を受診する患者さんが増えてきました。このことは、ニキビが重症化した後に形成されるへこんだ瘢痕や、逆に肥厚した瘢痕などを形成する前に積極的に治療を施すことを意味しますので、良いことと思われます。

２）ニキビの仲間

ニキビとして最初に生じるのは面皰（めんぽう、英語ではコメドと言います）です。面皰には閉鎖性と開放性があります。閉鎖性面皰は毛包に皮脂が貯留して皮膚の表面がやや黄色くなった丘疹で、いわゆる白ニキビのことです。開放性面皰は毛包に貯留した皮脂が盛り上がり空気に触れ酸化して黒くなった状態で、いわゆる黒ニキビといわれるものです。さらに毛包に常在する嫌気性菌であるアクネ桿菌の増殖が盛んになり炎症が起きると、紅色の丘疹（いわゆる赤ニキビ）が形成されます。さらに炎症が継続すると活性酸素が高まり毛包脂腺系全体が細菌と白血球に満たされた膿疱が形成されます。

３）ニキビのあとにできるもの

丘疹や膿疱などの炎症が軽快した後には、一時的にその部が赤くなります。これを炎症後の紅斑と言います。これが結構目立ちます。また、強い炎症性のニキビの後には毛包脂腺系全体が袋状にふくらんだ嚢腫（のうしゅ）や、線維化することによる結節などが残ってしまうことがあります。さらに毛包脂腺系全体の破壊が起こった場合には、炎症が治まっても皮膚に瘢痕（いわゆるあとと言われるもの）が残ります。これらは皮膚の陥凹（陥凹性瘢痕），隆起（肥厚性瘢痕）となって目につきます。さらに茶色のあととしての炎症後色素沈着も起きます。

４）ニキビの重症度

皮膚科専門医はニキビの重症度を測る場合、紅色の丘疹や膿疱などの炎症性皮疹の個数を目安にしています。それらが片顔に5個以下なら軽症、6個以上20個以下なら中等症、21個以上50個以下なら重症、51個以上なら最重症といったようなものです。

５）ニキビ対策

ニキビをなるべく作らない、出来たとしてもなるべく重症化させずに軽症のうちに治癒に導き”はんこん”を起こさないようにするために、いろいろな対策が考えられます。

�@ 1日2回の洗顔をしましょう。

私はオイルクレンジングを推奨しています。オイルクレンジングは「脂で脂汚れを落とす」原理です。ほとんどの場合、顔が脂っぽくなったりしません。むしろ女性はメイク落としに積極的にオイルを活用するとよいでしょう。そのあと、クレンジングフォームなどで洗浄するとさらにすっきりします。

�A 洗顔後に肌を整えるものとして、誘導体型のビタミンC配合の化粧水をお勧めします。
ニキビの部位では皮脂の分泌が盛んになり活性酸素が高まっています。誘導体型のビタミンCには、皮脂の分泌と活性酸素を抑える効果が報告されています。

�B 面皰にはアダパレン（商品名ディフェリンゲル）の外用が最も有効であることが報告されています。
この薬剤はレチノイドといわれる薬剤の仲間で、毛包上皮の角化を正常化させて、新しい面皰の形成を抑えます。その結果、その後の炎症性のニキビの発生も減ります。目に見える炎症性ニキビや面皰の周囲には目立たない面皰が潜伏していることが多いので、比較的広い範囲に外用することが薦められています。一過性に紅斑や刺激感が起きることがありますが、外用頻度を減らす、範囲を狭めるなど、種々の対策がとられています。

�C 炎症性のニキビには抗菌剤の外用や、それに加えて抗菌剤の内服などが、確実に炎症を抑える手段として推奨されています。
悪化時に使用し、軽快時には使用を中止するなど、細かな心配りを持って使用する必要があります。内服剤で頻用されているミノサイクリンという抗生物質は、アクネ桿菌に対する抗菌作用だけではなく、リパーゼ活性抑制作用、白血球遊走抑制作用、活性酸素抑制作用なども併せ持っている薬剤なので、私は第一選択薬剤として使用しています。ただし、めまいの副作用が出る人や、粘膜や皮膚への色素沈着を起こす人もいますので、経過を注意深く観察する必要があります。

�D ケミカルピーリングの併用

以上述べたような標準的治療といわれるものでもニキビのコントロールがつかない場合、ケミカルピーリングという手段があります。これはグリコール酸や乳酸などのアルファハイドロキシアシッド（ＡＨＡ）や、サリチル酸マクロゴールなどを皮膚に一定時間作用させることにより、角層を剥脱（ピール）させ、毛包の出口（漏斗部）部分の角化異常を是正する方法です。ニキビの中でも特に面皰には治療の選択肢として推奨されています。施術時間を厳密に守る必要がありますし、その後のクーリングも必要で、施術にはテクニックと注意が必要です。また、1回での著効は期待できず、３〜4回以上の施術が必要です。保険外診療になりますが、受けてみる価値はあると思います

�E ビタミンC内服、美白剤、保湿剤の併用

　ニキビの炎症後に起きる色素沈着も、長く残り目立つものです。それらにはビタミンCの内服の効用が期待されます。また、トラネキサム酸（ＴＡ）やヒアルロン酸などの美白剤や保湿剤と言われるものも、その軽快に役立ちます。ケミカルピーリング後に角層が一時的に失われた皮膚にも、皮膚の炎症を治め、皮膚を保護する目的で開発されている種々のホームユースの基礎化粧品が役立ちます。

　ニキビで大きな瘢痕を残してしまわないよう、小さなうちに正しい対処をするようにしましょう。