顔や手足などに褐色や黒色の皮疹が出現すると、悪性黒色腫（英語ではメラノーマ）ではないかと、とても心配される方が多いようです。そのような場合に役立つ検査がダーモスコピー検査です。ダーモスコピー検査の一番の特徴は皮疹の10倍から50倍の拡大像を観察できることです。単に拡大して観察するだけなら虫メガネと同じですが、ダーモスコピー検査に使用するダーモスコープという機器は、皮膚表面に密着させて使用し、このことにより皮膚表面の凹凸やふけによる光の乱反射が取り除かれます。また、ダーモスコープは強い光源を内蔵しているので、皮疹部には乱反射が少ない状態で強い光が当てられ透過してゆきます。そのため、表皮（皮膚の最上層）内のみでなく、真皮（表皮の下の血管や線維のある層）まで光が到達します。これによって、皮膚にメスを入れて細胞を取るなどの疼痛を伴う検査をせずに、短時間の診察で皮疹のかなり深部までの拡大情報を把握することができます。
ダーモスコピー検査が役立つ疾患の数は多く、現在、悪性疾患である黒色腫、基底細胞癌、ボーエン病など、また良性疾患である色素性母斑（ホクロ）、脂漏性角化症（老人性イボ）、老人性色素斑（シミ）、エクリン汗孔腫、血管腫などについては保険適用検査になっています。それらの疾患と肉眼的に似ている疾患に、ブラックヒール（テニスやサッカーなどの運動後に踵に出現しやすい赤黒っぽい出血斑）、爪甲下血腫（圧迫や擦れによる爪の下の黒色調の出血）、黒褐色の皮膚線維腫などがありますが、それぞれダーモスコピー検査で特徴的な所見を示すことが多いので、区別するのに大変役立っています。
顔や手足だけでなく、皮膚の色々な部位に褐色や黒色の皮疹が出現して心配な方は、一度皮膚科に相談することをお勧めします。
2013年2月27日（水）オントナに「褐色や黒色の皮疹が心配な方へ ―ダーモスコピー検査の有用性―」が掲載されました。
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