私は札幌市中央区北1 条西7 丁目のビル内で皮膚科クリニックを開設しています。同じビル内に関節リウマチを含む膠原病を専門としておられる佐川昭先生のクリニックがあります。そのため当院では、多数のリウマチの患者さんを診察する機会に恵まれています。公開講座ではこの経験を基に、リウマチと皮膚との関係、特にリウマチで気をつけるべき皮膚疾患についてお話したいと思います。
リウマチが原因で皮膚科医が患者さんと関わることになる皮膚症状には、大きく分けて4 種類あります(表1)。
まず、リウマチの関節外症状としての皮膚症状(表2)を診察する場合についてお話しします。v
表2に挙げた中でリウマトイド結節は、リウマチ以外には出現しない特異的(特徴的)な硬い皮膚の結節です。この結節は、病理組織学的に組織球やリンパ球などが、変性した膠原線維の周囲を取り囲むように浸
潤しているものです。
またリウマチでは、動脈や静脈の循環障害に基づくレイノー症状、リベド、潰瘍、紫斑などを認めますが、これらの中では、頻度は少ないながら悪性リウマチの際の比較的太い動脈血管炎による潰瘍が、治療に抵抗して難治性であることが知られています。
リウマチは自己免疫疾患の一種ですが、他の自己免疫疾患であるシェーグレン症候群や全身性エリテマトーデス、あるいは強皮症などと合併することがあります。そのため合併したそれらの疾患の皮膚症状をリウチの患者さんに認めることもあります。その他に、リウマチ以外の疾患にも現れることがある結節性紅斑や手掌紅斑や爪の異常などを認めることがあります。
リウマチには多種類の治療薬が使用されるため、薬剤による皮膚症状をしばしば認めます(表3)。
リウマチの患者さんは多種類の手術を複数回受けることも稀ではないと思いますが、皮膚科では手術創部の感染やその周囲の皮膚炎、その後の瘢痕などについて相談を受けることがあります(表4)。
により皮膚に潰瘍が認められなかなか治りにくいことがあります。また、手術処置の後ではその近傍のリンパ管の拡張やリンパ流のうっ滞が起こりますが、それらのリンパ管の中に組織球が多数集まって、皮膚に結節や丘疹が発生するリンパ管内組織球症という稀な疾患もあります。
最後になりましたが、皮膚科医とリウマチの患者さんとの関わりの中で最も多いのが皮膚感染症です(表5)。
リウマチ治療のかなりの部分がリウマチで起こっている免疫反応の抑制を目指しています。そのため、前述しましたように全身の免疫低下が起こり易く、種々の病原体(ウイルス、細菌、真菌など)による感染症 が起きてしまいます。
皮膚ではヒト乳頭腫ウイルスによるイボ、単純ヘルペスウイルスによる口唇部や外陰部の単純ヘルペス、水痘・帯状疱疹ウイルスによる帯状疱疹、下肢の連鎖球菌やブドウ球菌による蜂窩織炎や膿皮症、足や爪の白癬(水虫)などが最も多く認められます。患者さんによってはそれらを繰り返したり、一度に複数個の感染症に罹患していたりします。また、特に下肢の蜂窩織炎が重症で、早急に入院治療が必要なこともあります。その際には連携している病院の先生達に入院治療をお願いしています。
リウマチがあるために生じる、上記に示した種々の皮膚症状について、何が最善かを常に模索しながら診療を続けさせていただきたいと思っています。
10月3日(土)に札幌リウマチ市民公開講座にて講演しました。
講演内容:リウマチと皮膚「リウマチで気をつけるべき皮膚疾患」