女性のざ瘡(ニキビ)は生理(月経)周期と密接に関連しています。女性の月経周期は,排卵前の卵胞期(らんぽうき),排卵期(はいらんき),排卵後の黄体期(おうたいき)に分けられます(図1を参照)。卵胞期は一群の卵胞が成長する期間で、一群の卵胞はやがてエストラジオール(E2)を主体とする卵胞ホルモン(エストロゲン)の産生を増加させます。卵胞期の後半では,排卵のために選ばれた卵胞が成熟し、卵胞腔が卵胞液により増大し,排卵前には20mm程度に達します。そしてエストロゲンの値が急激に上昇してそのピークを迎え、排卵が起きます。排卵とは卵子の放出のことです。
排卵後、卵胞は黄体へと変化し、黄体期を迎えます。黄体期は平均で14日間続き、その後黄体は退縮します。黄体は黄体ホルモン(プロゲステロン)を分泌しますが、その量は毎日増加し、平均して排卵の7日目にピークに達します。プロゲステロンは卵が受精し胚になった後に、子宮内膜への着床に必要な分泌期子宮内膜の発達を促します。また、プロゲステロンは体温上昇作用を持っています。このため黄体期では基礎体温が0.5°C上昇します。黄体期のほぼ全体を通じてエストラジオール,プロゲステロンの血中の値が高く保たれますが、黄体期後期には低下します。そして月経を迎えます。もし卵が受精して着床が起これば,黄体は退縮せずに存続して,発育する胚によって産生されるヒト絨毛性ゴナドトロピンによって維持されてゆきます。
前頭部と頭頂部に一定のパターンで進行することを特徴とします。前頭部は中央の毛を残して左右の毛が少なくなり、英語のMの字に似た脱毛になります。頭頂部は頭のてっぺんから次第に薄く軟らかい毛が目立つようになり、大きく円形に脱毛します。
男女ともに起こりますが圧倒的に男性に多く起こります。成長期、退行期、休止期の毛周期(ヘアサイクルといいます。図1を参照。ヘアサイクルについては8月に更新した「髪(毛)について」をお読みください。)を繰り返すうちに、成長期が短くなる現象が起きていますので、毛があまり長く伸びないうちに抜けてしまいます。また毛を包む構造である毛包全体の大きさが減少する「毛のミニチュア化」という現象も起きています(図2を参照)。さらに、本来は硬く太い毛である前頭部や頭頂部の硬毛が、軟らかく細い毛である軟毛に変化します。
病気というより、加齢による発毛パターンの生理的変化と考えることもできますが、若い人でも遺伝的な資質を受け継いでいる人には発症します。日本人の20代の男性の10%、30代の男性の20%、40代の男性の30%に認められるといわれています。
月経周期の中で黄体期、さらにその後半である次の月経の数日前頃から月経開始後の数日頃までの間、ニキビが悪化することを実感している女性がたくさんいます。この時期はプロゲステロンの値がピークを迎えた少しあとから1週間くらいの時期に相当します。プロゲステロンは毛包に付属している皮脂腺に作用して、皮脂(あぶら)の分泌を促します。皮脂の分泌が亢進し、面皰の数が増え、それに伴うニキビ桿菌の増加が起こります(図2を参照)。この結果、プロゲステロンの値のピークから少し遅れるタイミングでニキビが悪化し数が増えます。ですから月経前のざ瘡(ニキビ)の悪化は、プロゲステロンざ瘡ともいえる性質を持っています。この時期に上手にニキビのコントロールをして大きな瘢痕や炎症後の色素沈着によるシミなどを作らないようにしたいものです。
最近のニキビの治療は抗生物質の内服と外用に加えて、毛穴に作用して毛穴のつまりを取り除くアダパレンという外用剤が使用できるようになって、ぐっと手ごたえのあるものになりました(このホームページの「皮膚疾患の特徴」の2010年4月のニキビについてを参照してください)。しかしアダパレンは、その作用機序をよく理解して慎重に使用を始める必要がありますし、妊婦さんや授乳婦さんには禁忌(使用してはいけない)のお薬です。これらのことから、ニキビ治療については皮膚科専門医への受診をお勧めします。